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【読書感想】シーソーモンスター

伊坂幸太郎さんの「シーソーモンスター」を読みました。

普段からあまり小説を読む方ではないのですが、昔から伊坂作品だけは好んで読んでいました。話の展開がスムーズで、頭の中に情景を描きやすい。言葉選びが上手でユニークなので、子供のときに読書習慣が不足していた私でも読みやすい小説です。ありがたい。

ふらっと近くの書店に入ると、文庫版のシーソーモンスターが店頭にズラッと並べられて激推しされていたので、特に冒頭を読んだりもせず購入。

 

どうやら「螺旋プロジェクト」というものがあって、8人の作家さんが共通ルールの元で作品を手掛けているそう。それぞれの作品の登場人物や世界観に繋がりがあって、続けて読むともっと面白い!とのこと。(へ~)
他の作品を今後読むかは分からないですが、とりあえず、シーソーモンスターだけで十分面白かったので読めたら読みます。(読まへんやつ)

www.chuko.co.jp

 

シーソーモンスターの中には、「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」の中編小説2つが収録されていました。それぞれ同じ世界線の、別の時代を描いている様な感じです。

シーソーモンスターは、元スパイの主婦が送る日々の生活苦、嫁姑問題がリアルに描かれていて、読んでいて苦笑いしてしまうほど。そもそも、事前情報なしで読み進めたので奥さんの方が元スパイなんかい、ってなりました。(めっちゃ裏表紙に書いてあった)最近、アニメのスパイファミリーが流行ったりなんかしてますが、実は自分の周りにもちゃっかりスパイおるんちゃうん?と想像しちゃいますね。そして、だいたい女性がむっちゃ強い。
その後は、伊坂作品らしく疾走感のある展開で問題が次々々々と起こり、最後は一気に伏線回収。そして『お前かい!』と声を上げたくなるヒーローのご登場。中盤はちょっと重めでしたが、後味スッキリの爽快作品でした。

 

スピンモンスターは、シーソーモンスターの後世にあたる時代背景で描かれた近未来作品でした。現実世界でもかなり浸透した人工知能がテーマのひとつになっており、「AIが人間を上回ってくる系」です。題材だけは使い古されているようにも感じますが、同じ境遇を負った2人の主人公の掛け合い、シーソーモンスターとの繋がりが絶妙に絡み合っていて、全く退屈さはありませんでした。
こちらも伊坂作品に度々登場する手法だと思いますが、「巻き込まれて」「追われる」物語です。(笑)
そして、途中にゾッとする真実も明かされます。人間の頭脳を模倣した人工知能のはずが、人工知能のための人間、に何時の間にかすり替わっている。そのときの主人公の動揺を自分に重ね、身震いしました。もしそんな未来が来るのだとしたら…
こちらの作品はハッピーエンドではなかったですが、それも一つの面白さかなと思います。その後の世界を想像しちゃいますね。

 

伊坂幸太郎さんの作品を読み返してみようかな。
「砂漠」とか最高なんだよな、西嶋が。